アートは、感じたことを表現すること
心の中に湧き上がってきたモヤッとした感情を、別の形にするのがアートです。ですから、出来上がるものは絵でも映像でも音楽でも何でもいいのです。出来上がったものに共感されることはっても、評価しなければならないものではないです。
デザインは、目的に沿ったものを作ること
目的があって作るものです。チラシの目的は商品・サービスを売ることですし、家なら生活に合わせた安全な場所を作ることになるでしょう。成果物は、目的に沿っているか評価しないといけません。
これをふまえて考えると、電子書籍の表紙は間違いなくデザインされるべきもので、自分のフィーリングを表現するものではありません。アートとデザインを混同したままノリで作ってるうちに楽しくなって目的を忘れたりすると目も当てられません。さっそく、提出したデザイン案がどうなったか振り返っていきましょう。
クジラデザイン2点
今回のデザインテーマは「信頼・権威」、タイトルにはオーソリティーの文字。ということで、オーソリティー(権威)をイメージ化できないかと考えたときに、頭に浮かんだのがクジラです。他にもライオンや象、リクガメなど強くて安定していそうな動物もいますが、ゆったりと泳いでいるさまがオーソリティーにピッタリだろうということでクジラ押しです。どこかで、「あのクジラの表紙の本がいいよ」と会話されればいいかなと考えていましたが
クジラが意味不明なのでボツになりました。
※著者のa-kiさんにコメントいただきました。
・本稿で「オーソリティーは必ずしも威圧的なものではない」と言っているので、生々しいクジラの絵は似つかわしくない。
・もう少しかわいいクジラなら印象が違ったが、そもそもクジラの意味が本稿で語られていないのでユーザーからみたら「?」となるはず。
組紐デザイン
上の写真の左下のやつです。この組紐デザインは、内容をイメージ化したものです。この本のコアメッセージは、3つのコンテンツタイプを認識してWEBサイトを作ろうといったことです。ですから、3色の紐をつかって淡路結びをつくり、ギターと合わせた写真を撮りました。淡路結びは継続の意味があり(一度きり=結婚式など)、ギターは著者サイトのテーマがブルースギターであるためです。あとがきなどで、表紙の意味を書いてもらって共感してもらえたらと考えましたが
伝わりにくすぎてボツになりました。
※著者のa-kiさんにコメントいただきました。
・たとえば三つ編みを編み上げる過程のような絵なら良かったかもしれない。
・ノウハウを出来るだけ一般化するためにギターサイトであることは本稿で出来る限り触れないようにしていた。「ギターサイトだから」という色は付けたくなかった。
ビジネス風デザイン
実は、この案を出した時点ではタイトル・サブタイトル・帯メッセージが決まっておらず、おそらく文字数が多くなりそうな雰囲気でした。ですから、ある程度の文字数があっても収まりそうなレイアウトで作成したのがこれです。オーソリティーサイトを作りだしている人✕3(コンテンツタイプ)のイラストを配置し、きっちり感でまとめています。
結果は、ご存知のようにビジネス風が選ばれました。配色に関しては、提案時には赤は作っておらず、著者のWEBサイトの色はどうか?とご要望いただいて追加したものです。サイトがあるなら、まずそこのメインカラーは確認すべきでした。ここから文字調整や配色の微調整を相談しつつ最終的なデザイン案となりました。
※配色に関しててもコメントいただきました。後から差し替えでできるのは電子書籍のいいところですね。
最終案の色に関しては、サイトカラーと必ずしも合わせる必要はなかったかなと思っています。改訂版を出す機会があればもう少し考えたいです。
ここで、このページの最初に書いたアートとデザインの話にもどります。ボツになったクジラ・組紐案も一応のデザイン的な思考で作ったつもりですが、提示した時点でまったく伝わらないものになっていました。いわゆるデザインを忘れたアートライクなものになっていました。
ということとで、表紙のテーマである「信頼感・権威」をいまいちど思い出し、著者と意見を交換しつつ調整して、上の形となりました。最後のほうは、書体を入れ替えてみたり、色の変更を行ったりと細かい修正が主です。
この後、無事出版され、いろいろな人の協力もありITカテゴリのランキング上位にも顔をだし、聞いた話ではけっこうな売れ行きのようです。表紙の出来がよほど良かったノデショウ!
電子書籍の表紙をはじめて作った話、これでおしまいではありません。もう1記事だけ続きます。次回、電子書籍の表紙を本職のデザイナーさんに評価してもらった話です。
>電子書籍の表紙を作った06 自分のデザインを評価してもらう
>表紙を作った本のレビュー